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ため息を吐きながらケーキの箱を開ける。 「Happy Birthday!」 プレートの文字が虚しい。 思い切って買ったチョコレートのバースデーケーキ。 ここの店のチョコレートケーキにはクルクルにカールしたチョコレートがふわふわとたくさん乗っかっている。 俺これ好きなんだよな。どうやって作るんだろう。 ……ここで食べてしまおうか。 自分の思い付きに、少しだけ楽しい気持ちになった。 ニャァ。 いつのまにか足元にネコがいた。 甘い匂いに誘われたのか、体を擦り寄せてくる。 「きみも食べる?美味しいんだよ。受験の時も、就活の時も、ここぞって時はここのケーキ。大好きなんだ。」 見るからに柔らかでしなやかな背中を撫でようと、そっと手を伸ばした時だった。 「その子、誕生日なの?」 ふいに声がしたのでびっくりして顔を上げると、若い男が立っていた。
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