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二人で、少し歩いた場所にある食品スーパーに向かった。
午後の陽射しが気持ち良く、歩きながらでも昼寝できるかも、と眞白は思う。
「俺さ、前はイタリアンやってたんだよ」
「あ、そうなんですか?」
眞白は、薫の昔の話が聞けて嬉しかった。
「だから、夜はちょっとイタリアンぽいことして遊んでる」
「なるほど。それも、美味しそうですね」
眞白が言うと薫は、チラッとこちらを見る。
今まで室内でしか見たことがなかった薫を、真面に見た気がして眞白は思わず目を細めた。
「あの店はさ、元々爺さんの店でさ。暫く閉めてたんだけど。
二年前かな、爺さんが亡くなって。それで俺が」
「そうなんですね。お爺さんもコックだったんだ」
「うん、コックしてて、働いてたアルバイトの女の子に手ぇ出して。それがまぁ、ばぁちゃん?今も生きてるけど」
「あはは…お爺さん、きっとお婆さんのこと可愛いなって思ってたんですね」
眞白は楽しくなる。
あの店にそんな素敵なロマンスがあったなんて。
「そうそう、だってばぁちゃん15くらい下でさ。あ、俺と眞白くらい?」
「え?薫さん、そんなに上なんですか?」
「ああ、もう今年38だよ」
「へえ!全然見えないです!」
そう言うと薫は嬉しそうに笑って眞白の頭を抱えこんだ。
「お前、可愛いなあ!アイスかなんか買ってやるよ」
「やったあ」
子供扱いされているのは、分かっている。
けれど、こんな風に薫の肌や匂いを感じられて、眞白はドキドキしていた。
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