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「な、来週はどこ行こうか。行きたいとこある?眞白」 まだ客も来ていなかったので海里は話し出した。 「そうだなあ。じゃあベタだけど、映画とか行く?」 「お、いいねえ。アクション?コメディ?それともラブかホラー?」 「そうだなあ、じゃあコメディで!」 二人で楽しく話していると「こんにちはぁー」と常連の年配女性三人組が入ってきた。 「いらっしゃいませ!」 眞白は笑顔を向ける。 「眞白ちゃん、今日も可愛いわねえ」 「ほんとほんと」 「ありがとうございます!」 眞白は、ぺこりと頭を下げて奥の席に案内した。 いつも通りの午後。 けれど何かが違って感じる。 海里と付き合いだしたから? それとも… 「エビフライ上がったよー」 薫がキッチンから声を掛けてきた。 「あ、はーい」 眞白は、本当の気持ちをギュッと奥にしまう。 それから笑顔を貼り付けた。 簡単なことだ。 みんなやってることだ。 本当の気持ちなんて誰にも分からない。 眞白自身の気持ちも。海里の気持ちも。 ましてや薫の気持ちなんて全く分からない。 眞白は、ただ真面目に仕事をしようと思った。 それで薫の役に立ちたい。 そうすることしか出来なかった。
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