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次の月曜日― 海里と映画に行くために電車に乗った。 ガタンゴトンと風景が変わっていく。 一番近い映画館まで特急電車で三駅ほど。 少し混みあった車内で、海里は眞白の前に空間を作ってくれて、守るように立ってくれた。 「大丈夫か?」 たまにチラッと海里が眞白を見る。 「うん」 海里のジャケットに掴まって、上目遣いに見ると海里は嬉しそうな顔をした。 守られるってこんな気持ちなんだな… 眞白は幸せな気持ちになっていった。 ―――― 「あー、面白かったぁ!」 映画はとても面白く、二人で涙まで流して笑った。 「はぁ、笑ったら腹減ったなあ!なんか食う?眞白」 「そうだねー」 二人で繁華街をブラブラと歩いた。 何を食べようか相談しながら角を曲がる。 「あ」 ホテル街だった。 さすがにここはまだ…と眞白が海里を引っ張って引き返そうとすると、何故か海里は黙って前方を見ている。 「海里、あのさ」 「なぁ、あれ見て」 「え?」 後ろ姿だったけれど、おそらくそれは宮本だった。鞄もスーツも髪の色も見覚えがある。 スーツ姿のスラリとした男と腕を組んで、1軒のホテルに吸い込まれて行った。 「なんで…?」 眞白はパニックになった。 「薫さんがいるのに他の男と浮気してるってこと?!」 海里の腕をギュッと掴む。 「なんか事情があるのかもよ」 海里は、必死に宥めようとした。 「そんなのある訳ない!事情があって腕を組んでホテルに行くなんて、どんな事情だよ!」 「まあそれは確かに…」 海里は黙り込んだ。 なんとなく気持ちが萎えてしまい、 ファストフードで軽く食事を済ませ、帰ることにした。 ガタンゴトン… ゆっくりと夕方の風景がオレンジに染まる。 行く時とは全く違う気持ちだった。
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