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「薫さん…」
「ん?」
部屋から出ようとした薫に眞白は後ろから抱きついた。
「抱いてください…。薫さんのことが好きです…」
薫は眞白の手を持った。一瞬沈黙した後「どうした?急に」と冗談交じりに言う。
「なんで?なんでダメなの?浮気でも遊びでもいい。捌け口にしてくれてもいいのに…」
眞白は悲しくなって涙声で言った。
「そんなこと言うな」
薫は眞白の手を離して振り返る。
「眞白の大切な初めてだろ?そんな…」
「宮本さんだって浮気してるじゃないか!」
泣きながら眞白は言った。
「俺、見たんです!宮本さん、薫さんを裏切ってる」
「ああ。それでか」
薫は悲しげな瞳をした。
「それ浮気じゃないよ。そっちが本命だ」
「え?どういうこと?」
眞白は驚いて聞き返す。
「俺とは1年前に終わってる。ごめんな、眞白が安心してここに住めるようにって、宮本に協力してもらって嘘ついたんだ」
「え…」
そうだったのか…
「そんなに俺、魅力ないですか?」
眞白は薫をじっと見た。
「そうじゃないよ。眞白はめちゃくちゃ魅力的だ。今すぐ押し倒したいくらい」
薫は笑って眞白の頭を撫でた。
「ごめんな。俺、勃たないんだよ。EDってやつ。それで宮本とも別れた。ただアイツ俺に胃袋掴まれちゃってるからここに通って来てるけどな」
薫は冗談交じりにそう言った。
「勃たない?………」
「そう。ボッキフゼン。情けないよなぁ」
薫は悲しそうに言った。
眞白はそれ以上何も言えずに、階段を降りてゆく薫について行った。
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