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夜。
眠ろうとした時に、不意に1枚の名刺が目に入った。
『TGI電機グループ営業課長 宮本真斗』。
貰ったままで壁のコルクボードに貼り付けていた。
(宮本さんなら薫さんのEDの原因を知っているかも)
余計なお世話であることは分かっていた。けれどどうしても薫を救いたい気持ちでいっぱいだった。
もし、その後で薫に他の愛する人が出来たとしてもそれでもいい。
眞白は、いてもたってもいられなくなった。
―――
次の日。
ランチ営業のあと薫が買い出しに出たので、眞白はドキドキしながら宮本に電話をかけることにした。
会社の代表の番号の他に、おそらく仕事用の個人の携帯番号が書かれている。
祈るような気持ちで、その番号を押した。
何度か呼び出し音が鳴ったあと宮本が出た。
『はい、TGI宮本です』
「あ、あの…佐藤です。佐藤眞白」
『え?眞白ちゃん?』
知らない番号からの電話に一瞬不信な声を出した宮本は、急に砕けた声になった。
『どうしたのー?驚いた』
「すいません。お仕事中に」
『大丈夫だよ。今、移動中で。電話鳴ったから路肩に車停めたから』
「あの、お時間作って貰えませんか?ちょっとお話が」
『うん、いいけど…なんだろ?』
宮本は少し訝しげな声を出したけれど、明日の夜なら、と約束してくれた。
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