10

3/6
155人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
夜。 眠ろうとした時に、不意に1枚の名刺が目に入った。 『TGI電機グループ営業課長 宮本真斗』。 貰ったままで壁のコルクボードに貼り付けていた。 (宮本さんなら薫さんのEDの原因を知っているかも) 余計なお世話であることは分かっていた。けれどどうしても薫を救いたい気持ちでいっぱいだった。 もし、その後で薫に他の愛する人が出来たとしてもそれでもいい。 眞白は、いてもたってもいられなくなった。 ――― 次の日。 ランチ営業のあと薫が買い出しに出たので、眞白はドキドキしながら宮本に電話をかけることにした。 会社の代表の番号の他に、おそらく仕事用の個人の携帯番号が書かれている。 祈るような気持ちで、その番号を押した。 何度か呼び出し音が鳴ったあと宮本が出た。 『はい、TGI宮本です』 「あ、あの…佐藤です。佐藤眞白」 『え?眞白ちゃん?』 知らない番号からの電話に一瞬不信な声を出した宮本は、急に砕けた声になった。 『どうしたのー?驚いた』 「すいません。お仕事中に」 『大丈夫だよ。今、移動中で。電話鳴ったから路肩に車停めたから』 「あの、お時間作って貰えませんか?ちょっとお話が」 『うん、いいけど…なんだろ?』 宮本は少し訝しげな声を出したけれど、明日の夜なら、と約束してくれた。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!