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宮本の職場の近くのコーヒーショップで待ち合わせをした。
眞白は、約束よりも30分も早く着いてしまい、キョロキョロと周りを見回したり、スマートフォンを弄ったりして時間を潰した。
薫と宮本もここで待ち合わせたりしていたんだろうか。
眞白の中に、付き合っていた頃の二人の姿が浮かぶ。
薫さんもきっとその頃は幸せだったんだろうな…
眞白は、なんだか暖かい気持ちになった。
「眞白ちゃん、ごめん。お待たせ!」
18時45分。約束より15分も早く宮本は来てくれた。
「仕事、早く終わったからさー」
宮本はそう言って、今買ったばかりのカフェラテを啜る。
「眞白ちゃんとデートだなんてテンション上がっちゃってね」
宮本は、優しく笑った。
「すいません。お時間作ってもらって」
眞白は、ぺこりと頭を下げた。
「どうする?込み入った話だったら近くに良い店があるけど」
「あ、はい。出来ればお願いします」
「わかった」
宮本は、スマートフォンを取り出して電話をかけ、予約を取ってくれた。
「19時半から大丈夫だって」
少し時間があるので、ゆっくりとコーヒーを飲む。
「そういえば…海里くんと付き合いだしたって?」
「え?あ、はい。一応」
「一応って何?」
アハハと宮本は笑った。
「一応は一応です」
なんとなくハッキリ言うのが、はばかられた。
特に宮本には。
「まーね。そういう年齢かもね。ハッキリさせたくない頃ってあるよ」
宮本は、柔らかく言った。
この人は、どんな言葉もどんな人も柔らかく包んでしまう。
それが、眞白との人間の差のような気持ちになった。
「あ、そろそろ行こうか。歩いて10分くらいだから」
宮本が時計を見て立ち上がる。
「はい」
眞白は少し神妙な顔で立ち上がり、宮本について行った。
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