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濃紺の暖簾が風に揺れている。
宮本の予約してくれた店は、小洒落た割烹料理の店で、中は他の客と出くわすことがあまりないような作りになっていた。
奥の座敷に通されて、眞白は緊張する。
「こんな高そうなとこ、初めてです…」
「アハハ、そんなに高くないけど。今日は気にしなくていいよ。俺がここに来たかったからさ。ご馳走します」
「え!そんな!俺から誘ったのにダメです!」
眞白は、座敷に上がるなりブンブンと手を振った。
「眞白ちゃん!俺を誰だと思ってんの?TGIの課長だよ?
それにこんな店で眞白ちゃんに払わせたりしたら薫に殴られるよ」
恐い恐い、と宮本は笑った。
殴りはしないだろうけれど、薫なら自分が払うと言い出しそうだ。
「すいません、じゃあお言葉に甘えます」
眞白はぺこりと頭を下げた。
宮本には、まったく何も敵わない。
眞白はそれをまざまざと見せつけられたような気持ちになった。
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