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「じゃあまた明日、10時に。引越してくるのは定休日の月曜がいいな」 「分かりました。ありがとうございます」 眞白は、頭を下げて店を出た。 秋の気配のする空が、高く広がっている。 なんだか久しぶりにちゃんと働いた気がしていた。 「あ、さっきのー!」 ブラブラと歩いていると肉屋の店先から声を掛けられた。 「え?」 『ミートショップおかの』 の前で海里が手招きしている。 「あ」 眞白は店先まで行き、海里の隣にいた母親らしき人にぺこりと頭を下げた。 「こんにちは」 「こんにちは。海里の友達?」 「あー、えっと…」 「そうだよ。友達!今日から薫さんとこで働くんだってさ」 眞白が戸惑っていると、海里がすかさず言う。 「そうなのね。薫さんとこにはうちも世話になってるよー」 母親が笑顔で言った。 海里とよく似ている。 「ちょっと寄っていけよ。えーと、マシロだっけ?」 「あ、けど…」 「いいじゃん、うちのコロッケ美味いよ。食べてけよ」 そう言って海里は、眞白の腕を引いて店の奥の部屋に連れていく。 「ゆっくりして行ってね」 母親に言われて「すいません、それじゃお邪魔します」と眞白は頭を下げた。 「ほら、食ってみ?美味いから」 揚げたてのコロッケを皿に乗せて出された。 「うわ、いいの?美味しそう…」 眞白は、アツアツのコロッケを頬張る。 「んー!美味いっ」 「だろ?」 海里は嬉しそうな顔をした。 チャラチャラしているのは見た目だけらしい。 結構良い奴だな、と眞白は思った。 「ほら、麦茶」 「ありがとう」 どうしてだか海里は、随分と親切にしてくれる。 「あの、なんでこんなに親切にしてくれるの?」 眞白は、不思議に思って聞いた。 「そりゃあ、なんていうか」 「俺に親切にしてもメリットなんかないんじゃない?」 眞白は言わなくてもいいのについ言ってしまった。 「あー、あのさ」 海里は少し照れくさそうに言った。 「俺と友達になってよ、マジで」 「え?別にいいけど…」 さっきは、もう友達みたいなこと言ってたのに。 二人で連絡先を交換する。 海里は、ふざけて目の前にいるのに電話をかけてきた。 「はい、もしもし?」 眞白も面白がって電話に出る。 『眞白ー?元気?』 「元気だよ」 『今度、二人でどっか行こうぜ』 「なんだよ、急に」 眞白は電話を切って海里を見る。 「あー、ふられた!ショックだわ」 「ばーか」 二人で笑いあった。 なんだか初対面とは、思えないくらいに楽しかった。
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