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悠夏の恋
「唯斗、悠夏、おはよう」
いつもと変わらない朝。私たちは高校2年の3月を迎えていた。
「瑞穂、おはよう。・・・私ね、2人に相談したいことがあるんだ」
悠夏が相談?なんだろう?
「私、好きな人が出来たの。南条先輩。先輩が引退して気づいたの。でも、先輩、すごく人気あるから」
悠夏は、女子テニス部に入っていて、南条先輩は男子テニス部の先輩だ。同じテニス部同士、一緒に練習することも多かったという。南条先輩は、テニス部の有望選手で、確か、大学もスポーツ推薦で決まったと思う。東京の大学に。
「じゃあ、早く告白しなきゃ。離れ離れになっちゃうよ」
「そうなんだけど・・・南条先輩、私のことあんまり知らないみたいだから、期待薄、かな」
「何言ってんの、悠夏らしくもない。当たって砕けろ、でしょ?」
私は、悠夏の背中を押す。
「悠夏、自信を持てよ。悠夏、テニスがんばってるし、きっと先輩も悠夏のこと見ててくれてるよ」
「そうかな・・・?そうだね、今日の部活の後、告白してみる」
悠夏が決心を決めたように言う。悠夏、がんばって。私は心から応援する。
「ありがとう」
悠夏は、弾けるような笑顔で言った。
そして、その日の夜。悠夏が私の家を訪ねてきた。
「聞いて、瑞穂・・・!OK、だって。先輩、ちゃんと私のこと知ってくれてた。私の想い、受け入れてくれた」
嬉しそうで、でも半泣きの状態で、悠夏が報告してくれた。
「よかった、よかったねぇぇ・・・」
私と悠夏は、抱き合って喜びあった。
「そうだ、唯斗にも報告しなきゃね。2人で行こ!」
そして、唯斗の家に行き、報告した。
「よかったじゃん。でも、もうすぐ先輩卒業だな」
「うん・・・」
悠夏が、思いを馳せるような表情をした。
このときには、まだ、気がつかなかった。悠夏の決断に。
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