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来生家は、春一を筆頭に3人の弟たちがいる。
次男の夏樹は就職もしている大人だが、3男と末っ子は高校生と中学生。
未成年のいる家に余計にトラブルなんか持ち込んでほしくないのが春一の本音だ。
えらく所帯じみた考え方だが、兄弟の両親は仕事でこの春から海外赴任になっている。
実質、長男の春一が弟たちの保護者でもあり、家にかかる問題はすべて春一の責任。
つまり春一には、弟たちを守る義務があるのだ。
「秋兄、救急箱を持ってきたよ」
春一の懸念をよそに、末っ子冬依が持ってきた救急箱で、3男の秋哉が男の傷の手当てを始めた。
シャツの前をはだけ、消毒薬をぶっかけるという乱暴なやり方だが、春一は見て見ぬ振りをした。
そして春一の思惑通り、消毒薬をぶちまけられ脱脂綿を傷口にグリグリされた男は、
「ううっ」
痛そうに呻いて目を覚ます。
「おっ起きたな。安心しろ。お前まだ生きてるぞ」
いっそのこと死んでいてくれれば連れ帰ってこなかったのにと、春一は恨みがましく男を見る。
秋哉は、
「そっちの腕はあげられるか? 包帯巻いちまうからな」
男の腕を乱暴に捻りあげるものだから、男はついに悲鳴をあげた。
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