きっかけ

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春一はチッと舌打ちをして、 「秋哉、そこを変われ」 男にギロリとひと睨みくれてやってから、黙々と腕に包帯を巻いた。 けっこうな重傷だったが、まぁ死ぬような怪我ではない。 だから、 「手当てがすんだら出て行ってくれ」 春一は固い声で告げる。 男の理由も事情も聞くつもりはない。 すると、 「ひっでぇな春。せっかく拾ってきたんだぜ」 唇を尖らせる夏樹。 「せめて歩けるようになるまで家に置いてやろうぜ」 「ダメだ!」 春一の否定に、男だけでなく秋哉や冬依まで飛び上がった。 夏樹は、 「おお怖、いきなり大声出すんじゃねーよ。秋や冬依まで怖がってるじゃねぇか」 呆れたと大げさに身震いしてみせると、 「だいたい最近の春はちょっとおかしいんだよ」 「おかしい? 何がだ」 「何がもなんもねーよ。弟たちの顔をよく見てみろ」 夏樹は顎をしゃくる。 秋哉は顔色を青くしているし、冬依は涙目になっている。 春一は少し慌てた。 「俺は別に、お前たちに怒鳴ったわけじゃないぞ」 「そんなのわかってるよ。でも最近の春は、ちょっと近寄りがたいって言ってんだ。何をそんなにピリピリしてるんだよ」 ピリピリ、しているのだろうか。
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