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早足で追いつくと、その背中に、
「……変な人だね、来生さんは」
「お前にだけは言われたくないな。それから、ウチと今回のことは何も関係ない。だから俺のことは下の名前で呼んでくれ」
「春一さん?」
「ハルでいい」
春一は素っ気なく言うと、もうアンリを振り返ってもみない。
困るアンリだったが、その時ふと、めまいに襲われた。
よろけて地面に手をつく寸前に、春一に支えられる。
「やっぱり、まだ動くのは無理だったか」
春一は呟くと、
「ホテルの予約は取ってないのか? どこか拠点はあるのか?」
アンリに肩を貸しながら聞いた。
だがアンリは首を振る。
「この街についたすぐに全部盗られたんだ。でも駅に行きたい」
「駅? そのままどこかへ行ってくれるなら金ぐらい貸すぞ」
あくまで憎まれ口を叩くのをやめずに、それでも春一はアンリを支えながら歩き出す。
最寄りの駅まで引きずるようにして歩きながら、
「お前軽いな。ちゃんと飯を食ってるのか?」
いらぬ心配をしてしまうくらい、アンリの体重は軽かった。
身長は夏樹と同じくらいだろうか。
それでも、筋肉というものがほとんどついていない華奢な体。
だから担いでも軽い。
この体で殴る蹴るされたら、さぞかしダメージも大きかっただろう。
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