第一話 ヤクザの家の家政夫

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言われた通り、玄関から一番近い部屋に入ればそこには海原さんがいた。 テレビやテーブル、椅子などが置かれていてこの部屋はフローリングになっている。 「お待たせしました」 「早かったな」 海原さんに椅子に座るよう言われ、前の席に座る。 「夕飯は基本的に正義のも合わせると五人分だな。オヤジはその時間にいるか微妙だけど、オヤジの娘が二人いるから俺も二人と食事をとることが多い。他の奴らは勝手に食べてるか帰ってこない」 夜月おじさんに一人娘がいるのは知っていた。 俺の四つ下くらいだったと思う。 でも、二人いるのは知らなかった。 「海原さんはお二人と仲良いんですか?」 俺の質問に海原さんは首を傾げる。 何か考えてるみたいだ。 「仲良いっていうか、なんだろうな。姉の方は十年近く面倒見てるし仲は良いと思うけど、まぁ面倒見るほど手のかかる感じでもないけどな」 「じゃあ、妹さんの方は?」 何気なく聞いてみると、海原さんは微妙な顔になってまた考え込んでいる。 何かあるのだろうか。 「あんまり心開いてる感じじゃないな。数年前にいろいろあって、それ以来」 「なんかすみません……」 完全に触れちゃいけないところに触れてしまった気がする。 濁すあたり何かあったとしか思えない。 思わず謝れば、海原さんは「気にしなくていいぞ」と少し笑う。 「だから、今日から頼むな。俺はちょっとお嬢たちの迎えに行ってくる」 「え?若頭ってそういうことをするんですか?」 「いや、これは別に若頭としての仕事じゃないんだが……」 目を見開く俺に海原さんはため息をつくのだった。
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