23人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
言われた通り、玄関から一番近い部屋に入ればそこには海原さんがいた。
テレビやテーブル、椅子などが置かれていてこの部屋はフローリングになっている。
「お待たせしました」
「早かったな」
海原さんに椅子に座るよう言われ、前の席に座る。
「夕飯は基本的に正義のも合わせると五人分だな。オヤジはその時間にいるか微妙だけど、オヤジの娘が二人いるから俺も二人と食事をとることが多い。他の奴らは勝手に食べてるか帰ってこない」
夜月おじさんに一人娘がいるのは知っていた。
俺の四つ下くらいだったと思う。
でも、二人いるのは知らなかった。
「海原さんはお二人と仲良いんですか?」
俺の質問に海原さんは首を傾げる。
何か考えてるみたいだ。
「仲良いっていうか、なんだろうな。姉の方は十年近く面倒見てるし仲は良いと思うけど、まぁ面倒見るほど手のかかる感じでもないけどな」
「じゃあ、妹さんの方は?」
何気なく聞いてみると、海原さんは微妙な顔になってまた考え込んでいる。
何かあるのだろうか。
「あんまり心開いてる感じじゃないな。数年前にいろいろあって、それ以来」
「なんかすみません……」
完全に触れちゃいけないところに触れてしまった気がする。
濁すあたり何かあったとしか思えない。
思わず謝れば、海原さんは「気にしなくていいぞ」と少し笑う。
「だから、今日から頼むな。俺はちょっとお嬢たちの迎えに行ってくる」
「え?若頭ってそういうことをするんですか?」
「いや、これは別に若頭としての仕事じゃないんだが……」
目を見開く俺に海原さんはため息をつくのだった。
最初のコメントを投稿しよう!