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彼女のココロ、彼氏のココロ
「私、『これだけ綺麗だからなんでもできると思ってた』とか『そんなことするの似合わない』って言われるんだ。中身は普通なのに」
はっとした。
玲さんは美しい。だから完璧だと僕も思っていた。
「今までの恋人には、私を何度も否定されてきた。仕事を辞めろと言ってきた人もいる。
私は見た目に縛られず自由に生きたいんだ。
だから城之崎君にはただ私の中身だけを見てもらって、人並みの恋愛がしたかった。秘密にしていれば傷つくこともないから」
初めて聞く玲さんの本音。
今までならそんなこと聞いても「僕らちょっと合わないかもね」と別れていただろう。
でも僕は玲さんを本気で好きになってしまった。
想いが冷めることはない、止まらない。
だからこそ、悲しくなった。
「玲さんにとって僕は、『人並みの恋愛をするのに都合のいい相手』なんですか?
僕のこと、信じられないんですか?
こんなに、真剣なのに?」
「え、あ、いや」
珍しい玲さんの「しまった」という顔。
「……頭、冷やしてきます」
僕は空になった缶を握りつぶして展望台を早足で降り始めた。頭がガンガンする。なんで涙が流れるんだ。
これは、人をうわべで判断してきた報いなんだろうか。
階段を降り切ると、僕は走り出した。
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