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「城之崎君!」
慌てて僕の腕をつかむ手は思いの外、力強くて。ぐい、と引っ張られて視線がぶつかる。
「離してください」
僕の顔を見て玲さんがはっと息をのみ、手を離す。
「ごめん、そんなつもりじゃ」
「じゃどういうつもりで」
情けない、震える声。
「始めは、確かに君を都合のいい相手だと思ってた。でも」
玲さんの覚悟を決めた真剣な顔。
「長続きしないと思ってたのにどんどん君にのめりこんでしまった。会えない時も君のこと考えてる。
もう今じゃ自分を全部知られるのが怖い。君には、期待外れだと思われたくないんだ……変だよね」
公園の街灯が玲さんの乱れた髪を照らす。僕は手を伸ばして整えた。
「城之崎君」
「変じゃないですよ。僕だって怖いですよ」
「……」
「玲さんを想うたび、いつもの僕じゃなくなる。心がかき乱されるんです。
……ねぇ玲さん、これからお互いのことを知って、傷つけ合うことだってあるかもしれません。僕はそれでもそばにいたい。そんな相手、初めてなんです。
そんな恋愛じゃ、だめですか?」
玲さんは一瞬驚いた後、花が咲いたようにふふっと笑った。
「城之崎君となら、いいよ」
綺麗だ。
もう何度目だろう、玲さんの眼差しは僕の心を射る。
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