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彼氏の事情
彼女から返信が来ない。
朝6時。
ベッドでごろごろしていた僕は、アラームを1秒で止めた。通知はたくさん来るのに肝心の人から来ない。いい加減起きることにした。
顔を丁寧に洗って、右、左と首を振り今日の肌チェック。
うん、どこから見てもイケメンだ。具体的に言うとかわいい系国民的アイドルの部類に入る。
この顔のおかげでわりとモテてきた。真面目に大学の講義は受けてるし、先生方の覚えめでたく友人も多い。なんなら元カノたちとだって仲はいい。実家はわりと裕福で大学生の割にいいマンションに住めている。
順風満帆な人生。
彼女がめったに連絡くれないことを除けば。
化粧水をつけながら「アレクサ、テレビつけて」とつぶやく。パンをトーストし、サラダを作ってインスタにアップした。瞬く間に「いいね!」がつく。
「おはよ!素敵な朝ごはん!樹里君の顔も見たいなー!」なんてコメントが流れていく。
前ならサービスしてたけど、自撮りも割と時間を食うのでスルー。今の僕にはやることがある。
「昨日発生した立て篭もり事件は、警察の突入で鎮圧されました。犯人が怪我を負ったものの、人質は全員無事で――」
テレビは国会議員の収賄容疑、国際フォーラムのテロ対策、巷で話題の音楽、ファッションの情報を流していく。横目で見ながら朝食をとった。
冷凍庫からすっかり固まったチャーハンを取り出して、保冷剤と一緒に袋に詰める。
早めに家を出て、クロスバイクを漕ぎ出す。
いい天気だ。青い空の下、川沿いの道を進む。水面が太陽の光できらめく。
だけどモヤモヤする。
いつになったら玲さんから返信が来るのか。一昨日から連日送ってるのに。
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