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ピピピピ…
「んあ…」
朝六時、無機質なアラームに起こされる。
起きるまで止まらない仕様だから起きるけど…何の予定もない。やることがない。
そう理解した上で起きなきゃならんのは結構億劫なんだ。
両手で目を擦り、布団から出て顔を洗いに行く。歯を磨きながらAIが組んだ完璧なスケジュール一覧を苦々しく見つめる。
週の初めから毎日確認するけど今日も予定無し。希望すれば「学習」に参加するくらいだけど学習と書いて洗脳と読むんで参加意思無し。
しかし…ふと、来週の予定が見切れている。
なんとなしに液晶をスクロールしてみると…
「!!」
おえっ、歯磨き粉飲んじゃった。
喉に通るスースーした嫌な感じを我慢しながらスケジュールを食い入るように見つめる。
『来週から繁殖期です。繁殖ルームに転送されます。』
「ま、まじか…」
それしか書いてない短文に恵は高揚し興奮した。一般的な思考を持つ人なら「お盛んね」と客観視するかもしれないがこの世界は全てAI様に管理されていて基本的に希望がない。
そこに一筋射し込む光を見つけた恵は気付けば涙さえ頬を伝っていた。
心臓がバクバクうるさくなる。息も荒い、どうしよう緊張する!相手が誰とか贅沢言ってられない。久しぶり…一年ぶりの人間だ!
楽しみなのが当たり前なんだ!
数少ないイベントに期待した恵はそれだけで虚無な一週間をワクワクしたまま乗り越えることが出来た。
でも相手が妊娠したらまたサヨナラか…いや、そんな悲観をせず前を向くことだけが恵の正気を保ってくれた。
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