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⑵
「んっ…」
目を開けてもまだ白い…。
頬が冷たい、どうやら俺は床に倒れて突っ伏しているらしい。
恵の意識がもうろうとしていると近くから人の声が聞こえた。
「う…っ」
「!!!」
一年振りの、自分以外の肉声。
それに目をカッと見開いた恵は痛む頭を抑えつつ、根性で起き上がる。
「あ、あのーーーー!」
少しだけ、違和感は感じてたんだ。
いくら久々に聞くからって声が低いなって。
でもハスキーボイスの女性だと自分の脳ミソにこじつけていただけでーーー
「あれ…」
「あ…?」
恵の目の前に倒れていたのは立派な男だった。それは比喩表現なんかではなく現実に逞しい男性ということだった。
「あ、あれ…あれ???」
いかん脳ミソバグってきた。
言葉にならないうちに体を起こした相手をまじまじと観察する。多分国籍は同じだな、身長は俺より高く180超え、肩幅もがっしりと均整取れた、黒髪の熊のような男。顔全体も四角く、目元は垂れてなんだか第一印象だけでは頼り無いタイプ。
10は年上っぼいんだけどなぁ。
「…ここは…君は、誰だい?」
「…????」
「言葉は通じているかな、ええと僕は拓真だ、初めましてだね。」
「え、あ、俺は、俺、はサトシ…です。恵みって書いてサトシって読むんですよ。」
唐突にコンプレックスを打ち明けてしまったので一瞬で後悔したが、男は親しげに微笑む。
「すごく素敵な名前だね。」
「…………。」
なんだか少し気分が落ち着いた気がする。
しかし興奮冷めやらぬうちに恵は20畳ほどの空間の白い壁をドンドン叩く。
コンクリとか脆い素材ではなくとんでもなく丈夫な壁だと拳の痛みで察した。
「いてて…おい、おーい!管理者…管理AIはいないのか!?ここ、間違ってるぞー!」
ポーーーン
『壁カラ離レテ クダサイ』
「!!!!!」
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