1.退屈な日々

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1.退屈な日々

「はぁ…現実ってなんでこんなに退屈なんだろ…」   大きなため息とともに神童かごめはそう呟いた。 「おやおや、容姿端麗でスポーツ万能。全国模試では全教科満点で文字通り神童のかごめ様が生きててため息をつくことなんてあるんですかー?」   からかうような口調でそう言ってきたのは同じクラスの【三神彩みかみあや】。彼女とは幼馴染で、数少ない…というか唯一の友人だ。 「かごめ様って…いやー容姿が良くても勉強できてもスポーツできても何も楽しくないよ…だって…この世には【魔法】がないんだから!!」   私は声高らかに宣言する。   巫山戯た発言に思えるかもしれないが、至って本気だ。   神童と呼ばれ物心ついた時にはできない事を探す方が難しくなっていた私は、幼い頃に読んだ魔法学院を題材にしている小説に出てくる【魔法】にずっと心奪われていた。 「出た、かごめの魔法バカ。黙ってれば超絶美少女なのに急に高校3年生にもなって中二病みたいな事言い出しちゃうんだから残念よね…」   可哀想な人を見る目で見てくる友人を尻目にスマホを取り出し、授業の合間のルーティンであるネットサーフィンをしていると面白そうなゲームが目に入ってきた。 「なにこれ、【Elysionエリシオン】剣と魔法の世界!?ファンタジーもののVRMMOがあるなんて知らなかった…。しかも発売日明日じゃん!大人気っぽいから予約は勿論もう無理だし終わった…」   絶望に打ちひしがれていたところ、彩がニヤニヤした顔でこちらを見つめているのに気が付いた。 「ふふ、かごめちゃんぜったい興味持つと思ったよー。はいこれ、かごめちゃんの分のチケット!手に入れるの大変だったんだからねー?」   彼女はポケットから2枚分のチケットを取り出すと片方を私に手渡す。 「え、いいの!?私がこのゲームを欲しがるって予測してるとは…さすが我が親友、愛してる。結婚しよ?」   屈託の無い笑みでそう答えた。   すると、彼女は何やら赤い顔をしながら 「い、いいから!買ったら一緒にやろうね!!(びっくりした…その笑顔で愛してるとか結婚しよとか反則でしょ)」 「もちろん!ごめん、最後の方聞き取れなかったんだけどなんて言ったの?」 「な、なにも言ってないから!ほら、私の家こっちだし!またあとでね!!」 「あ、うん!またねー…ってもういないし…あんなに急いでどうしたんだろー?」   考えても仕方ないので大事そうにElysionのチケットをボケットに仕舞い、帰宅することにした。
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