12.彩視点 歪み

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12.彩視点 歪み

「かごめちゃん、今日は遅いなぁ」  いつも帰ってくる時間になっても帰って来ない。  何かあったのか心配になるけど、外の世界は怖いし、かごめちゃんに出ちゃダメって言われてるから、私には待つことしかできない。  あれから半日経過した。明らかにおかしい。かごめちゃん、また後でねって言ったのに… 「私、見放されちゃったのかな…?」  かごめちゃんがいないとなにもできない。  かごめちゃんがいないと生きていけない。  お願い…かごめちゃん…私が悪いことしたなら謝るから帰ってきてよおお… 「コンコン」  ドアのノック音…かごめちゃん!!  ドアを急いで開けるとそこにはかごめちゃんの姿はなく、私と同じ年齢ぐらいの少年が立っていた。  男の人…怖い、怖い、怖い。  あの日の事がフラッシュバックして息が出来なくなる。 「あの、大丈夫ですか?ごめんなさい、ダンジョンが崩壊しちゃったらしくて、それを記事に纏めて届けていたんです」  ダンジョンが崩壊…?  ダンジョンってかごめちゃんがいつも行ってるとこだよね…? 「それじゃあ、僕はこれで。記事はそこに置いておきますね」  何も聞こえない。  聞きたくない。  ダンジョンが崩壊したって事は、かごめちゃんも死んじゃったって事なんだよね…。  だったら私もーー  ダメだ。私が死んでかごめちゃんの事を思い出せなくなったら、一緒に居られなくなる。 「生きなきゃ…」  なんとしてでも、かごめちゃんに会わないと。  もう何処にも行かないように今度は絶対離さない。
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