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「あーもー!!なんにも見えないじゃないのよー!!」
不満全開のサラの言葉は、大声であったにも関わらず他四人にはギリギリ聞き取れる程度だった。
五人は常に目視出来る近い距離で移動している。なのに聞き取ることが難しいのは環境のせい。
吹き荒れる豪雪が邪魔なんだ。
───極寒地帯。そこは日中でありながら気温がマイナスに突入していて、夜にもなればマイナス二〇度を下回る。まず人間が生存するには過酷すぎるエリアを先頭で歩くユラシルは後ろ向きで歩きながら声を大きく張って、
「一面銀世界の極寒地帯はどうですかー!?」
「高温地帯の方がずっと楽だったよ!」
「何ー!?聞こえないぞレビックー!!」
「防寒対策万全でこれは異常っすよ!!これ探索っていうより歩いてるだけっすよね!?」
「なんだってー!?シェリムなんつったー!?」
「もうどっちに向かって歩いてるのかもわかんない…!!探索開始からどれくらい時間経ったの!?」
「えー!?メイリーなんか言ったかー!?」
「ユラシル!!あたしたち本当に探索出来てんの!?」
「あー!?サラちゃんなんだってー!?」
「くっ、こんな環境じゃ会話もままならないわよねやっぱり…」
「だからこうして密集して歩いてんだろ!?」
「あんた絶対全部聞こえてるわよね!!?」
「オホホー!なんのことかなー!?」
後ろ向きから前に向き直って歩くユラシルは一切防寒対策を取っていない。ユラシルは熱を閉じ込める葉で作った服は全員分用意していて四人に着させている。それに加えて各自持参した防寒着でなんとか寒さには耐えられている。
しかしなんと、防寒対策を一切していないユラシルは普段着のままだ。マイナスを下回る環境下で薄着、しかも上半身は半袖だから見ているこっちが寒くなる。
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