メッセージアプリは波乱の予感

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「……え?」  急な話題に戸惑う私をよそに戸田課長は微笑みながら手を振ると、今度こそ慌ただしくもドアの向こうへと消えていくのだった。 ――  さて田中君と戸田課長が獅子座とわかった日から暫く経ったある日の朝――私は立ち往生してしまった通勤列車の中にいた。  遮断機警報の異常とやらで点検中だと数分おき聞こえてくるアナウンスを聞くこと、もう何回目となるだろう。腕時計をちらりと見ると間もなく始業時間となるところ。  これは完全に遅刻だなあ……。  なんとか鞄から携帯を引っ張り出してメッセージアプリの戸田課長のアイコンをタップする。 『お疲れ様!今夜は暑いらしいけど、クーラー入れっぱなしにして、寝冷えしないようにね』 『すっかりスイカもビールも美味しい季節だね。けど、食べ過ぎ注意だよ』  そのトーク画面に並ぶのは、昨日迄に受信していた沢山のメッセージ。部下の体調管理も徹底しようという気持ちの現れなのか、戸田課長からは毎日のようにメッセージが発信されてくる。   仕事熱心なんだろうなあと、改めて感心しつつ『電車が緊急停止したので出社遅れます』と文字を打つとすぐさま既読のサインがつく。……これで取りあえず報告はできた。私は安堵のため息をつくと、再び状況を伝える車内アナウンスに耳を傾けた。
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