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「……ありがと、ね」
ため息をつきながら田島さんに感謝する。
「いえいえ。でも今ので確信したんですけと、やっぱり課長の様子はおかしいですよ」
「そう、かな」
「そうですって!だっていつまでも小西さんの体を触って離そうとしないんですよ?」
田島さんは、「それに」と身震いすると両手で自身の二の腕を抱き締める。
「好きでもない人から好意をガンガンに寄せられるのって、本能的に無理。キモイですよ。それが社内の人なら尚更っていうか」
「……そう?」
「そうですよ!相手に納得いくように告白を断るのだって大変なのに、それが社内の人からだったら最悪ですよ」
「でもこの間田島さん、高橋君のこといいなって言ってたけど……?」
「それはそれ、これはこれですよ。高橋さんのはただの憧れっていうか。職場でガチ恋なんて、うまくいかなかったら人間関係にヒビが入って仕事どころじゃなくなって結局悲惨の一言ですよ。ほんとなんで社内で恋愛しようとするのか、必要以上に波風立てないでほしいわーって感じですよ」
意外とドライな田島さんの恋愛観に驚きつつも、その意見に妙に納得もしてしまう。
……そうか。そうだったのか。
指の感触がまだ残る部位に手を置くと、ぎゅっと唇を噛み締める。
さっきの例えようのない衝動の正体。
体を触れられて、好意的な視線を向けられて、ただただ嫌で仕方なかった。それは確かに嫌悪感と言って間違いのないものだった。
けれど、先程の自分の感情の正体を知った一方で、私は気が付かなくていい事まで気がついてしまった。
『自分の好きじゃない人からの好意は、重荷でしかない』
――それってつまり、田中君も例外ではないのでは?ってことに。
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