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神社の境内には、既に数組の親子が集まっていた。境内のあちこちには、提灯がさげてあり、明るすぎず暗すぎず足元を照らしている。
水をはった大きなタライでヨーヨー釣りをしたり、スーパーボール掬いをしたりしている子たちがいて、ちょっとした縁日のような雰囲気だ。俺は、社務所に行くと一時学童保育クラブの関係者と思われる派手な柄の鯉口シャツを着た人たちに声を掛けた。まっさきに振り返った唐獅子模様の鯉口シャツをきた体格のいい男性の胸には「かしま」と書いた布が名札のように縫い付けてあった。
「こんばんは。今日の参加費はこちらでお支払いすれば良いですか?」
「お、どちら様かな?」
「たなべまこと君です」
「おうおう。待っておったぞ」
すると、社務所の奥からぽわぽわした白髪頭のお爺さんが出てきた。作務衣姿にやっぱり「すわ」と書いた名札を縫い付けてある。手にクリップボードを持っていた。今日の参加者名簿だろうか。
お爺さんーーー諏訪さんは、名簿にチェックを入れると500円を受け取った。引き換えに、手持ち花火の束を渡された。
「みなが集まったら、蝋燭の準備をするでな……。ところで……」
諏訪さんは俺の顔を覗き込んだ。
「……やはりそうか。五百旗頭んとこのボンボンじゃな」
「え?」
ビックリして諏訪さんの顔を見つめ返す。このお爺さんと、どこかで会ったことがあったっけ?
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