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「ふぉふぉふぉ……。ここでお宮参りや七五三をしたじゃろう?」
「え……ああ」
そうだった、……かも? あれ? この爺さん、宮司さんか? にしても、そんな昔のこといちいち覚えてるか? 普通。お宮参りも七五三も、たくさんの子どもがしていたはず。
後ろで玉砂利を踏みしめる音がしたので振り返ると、目を見開いてビックリした顔でフミさんが固まっていた。諏訪さんがフミさんを見て、ほうほう、と言って頷いた。
「これはまた……珍しいモノが。いやいや、咎めるつもりはないぞ。悪さをするものでなければ儂らはどうともせん」
え? ええっ? この人は神職だから? フミさんの正体が解るのか?
俺はフミさんとお爺さんを交互に見ながら、この場をどうしたものかと焦った。
「こちらのお嬢さんは、ボンボンの連れさんかい?」
社務所にいたもう一人、龍の柄の鯉口シャツの男性がフミさんを見て言った。左胸には「かとり」の文字。
「はい。一緒に住んでいます」
「フミと言います」
フミさんは俺の言葉を受けてぺこりと頭を下げた。
「お嬢さんのような存在がいるのであれば、この世もまだまだ捨てたものではないのじゃろうな」
諏訪さんは独り頷いた。
社務所にひょろッとした俺と同年代くらいの男性が入ってきた。細かい松葉模様の鯉口シャツを着て、重そうなケースを抱えている。
「兄さんたち、ラムネが来たよ! そろそろみんな集まったんじゃないかい?」
「狐塚はせっかちだねぇ。まだ、時間じゃないよ」
「おや? そうだったかい?」
香取さんから狐塚と呼ばれた男性は、照れくさそうに頭を掻いた。
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