しゅわしゅわ 絵日記

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 フミさんと一緒に社務所を出る。入れ替わるように親子連れが社務所に入り、諏訪さんたちから歓迎を受けていた。フミさんは、なんだか居心地悪そうにソワソワと諏訪さんたちの様子を盗み見ていたかと思うと、俺の浴衣の袖を掴んでぴっとり寄り添ってきた。 「フミさん、どうした?」 「……いや、ちょっと、びっくりして」  「?」  そもそも、まこと君と一緒にいたはずのフミさんがなんで俺を追って社務所に来たのか。  まこと君がいたところにもどると、まこと君のお母さんとさとる君のお母さんが立ち話をしていた。 「あれ? まこと君たちは?」  周囲を見回すと、フミさんがヨーヨー釣りのところを指さした。  ヨーヨーの浮いた大きなタライを囲んで子どもたちが楽しそうにしているのを、白地に茄子紺の桔梗柄も粋な浴衣を着こなした上品なご婦人がにこにこと眺めている。博多帯に挟んだ布には「おおがみ」と書いてあった。このご婦人も神社の学童のスタッフらしい。 「はいはい! みんな揃ったみたいだから、蝋燭準備するよー!」  大学生くらいの派手な顔立ちの女の子が、小さなブリキのバケツに入った蝋燭を両手にいくつも下げてやってきた。名札には「あさま」と書いてある。神社の学童の子たちだろうか、慣れた様子で浅間さんに近付き、手に手にバケツをもらうとチャッカマンで火をつけてもらっていた。  いつの間にか、俺のところにまこと君が戻ってきていた。
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