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俺も通っていた小学校は、住宅地の真ん中にある。俺が小学生の頃は子どもが沢山いた覚えがあるが、今は一学年一クラスしかなく、全校生徒数も160名程なのだそうだ。
少子化なんだなぁ。
花火のシュウシュウという音。
ツンと鼻を衝く火薬の匂い。
あちこちから楽しそうな笑い声が上がっている境内。
はしゃいでいる子どもたちの様子を見ながら、和やかに談笑する親たち。
昔から変わらない夏の夜の光景も、
随分とこじんまりしてしまっているんだ。
子どもたちの手持ちの花火が少なくなってきたところで、狐塚さんが周囲に声を掛けて仕掛け花火に点火し始めた。思えば最近、安心して花火ができるところも少なくなってきた。それにしても、神社の境内で花火なんて火気厳禁だろうに、よく消防署の許可が下りたものだ。
手もとの花火が無くなった子たちが、親に連れられて境内の中央に集まってくる。鮮やかな火柱があがり、子どもたちの歓声が上がった。
背後でカランと軽やかな音が鳴り、俺とフミさんは振り返った。
「ほい。ボンボンたちもどうぞ」
香取さんがクーラーボックスに入ったラムネを二本、俺とフミさんに差し出した。
「あ……」
フミさんは困った顔をして俺と香取さんの顔を見る。香取さんは、フミさんの表情の意味が解らないようで、怪訝な顔をして俺を見た。俺は、周囲の人たちの目が中央の仕掛け花火に向いているのを確認してから、香取さんの耳元に小声で囁いた。
「フミさん、炭酸苦手なんです」
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