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俺は駅までの通勤路をいつも通り自転車で通っていた。
途中で小学生たちの登校班とすれ違い、角を曲がって神社の鳥居の前を横切ることになる。
鳥居をくぐって石段を上った先にある神社は、社と社務所は立派だが普段は無人。社の後ろにひかえる裏山にはドングリの木がたくさん生えてて、まこと君も言っていたが格好の虫取りスポットだ。俺も小学生の夏は友達と入りびたっていた。茅の輪くぐりをする「夏越しの大祓」の後は、大した行事も無く秋祭までは閑散としていた印象だった。
いつも通り鳥居の前を横切ろうとして、掲示板に真新しい張り紙がしてあるのが目にとまった。自転車の急ブレーキを掛けて、内容を確認する。
(夏季 一時学童保育 児童募集)
へぇ……。境内で一時預かりするのか。
今時の学童保育でありがちなNPO法人や民間企業ではなく、個人名が連絡先になっている。
(連絡先 諏訪 携帯電話:080-✖✖〇△ー◇✖▲〇)
諏訪……さん、かぁ。
俺は、石作りの鳥居を見上げると、再び自転車をこぎ出した。
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