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終業式。
痛いくらいの日差しの中、ぼくは、さとると一緒に家に帰っていた。朝はほぼ空っぽだったランドセルの中は、夏休みの課題ノートと通知表と、中身のつまったお道具箱でいっぱい。ベロには防災頭巾が挟まっていて、両手は絵の具セットと鍵盤ハーモニカで埋まっている。ついでに斜め掛けに水筒を下げてるから、2年生になって少し背が伸びたぼくでも、ちょっとヨロヨロしてしまう。
「あっつー……。ちょっと水飲んでいこ」
街路樹の木陰に入って、さとるは絵の具セットと鍵盤ハーモニカを置いて、水筒を手に取って中をゴクゴク飲み始めた。あたりはセミの鳴き声がシャワーみたいにひっきりなしに響いている。ぼくもさとるも、頭から水を被ったみたいに汗びっしょりだった。
ぼくも荷物を下ろして水筒を手にしたが、あとちょっとで空っぽだ。小さくなった氷がカラカラと音を立てている。大きい水筒でも全然足りないなぁ……。
「さとるは、夏休み、どうするの?」
「え? オレ?」
さとるの母ちゃんはパン屋さんで働いている。朝早いけど夕方には家に居るから、普段さとるは学童には入ってなくて、去年の夏は一時学童を利用してた。
「神社の学童行くことにしたんだ。なんか、面白そうじゃね?」
さとるは、目をキョロリとさせるとニカッと歯を見せて笑った。
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