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ーーー僕はあの日に…夢というものをーーー
「はーい、席についてー。転校生を紹介するぞー」
担任の若い男の先生がそう言い放った瞬間、僕のクラスは沸き上がった。
どんな子だろう?と盛り上がるのも当然、田舎の、小さなこの小学校に転校生がやってくるのだ。
少し教室がざわついた後、ついにその時がやってきた。
その子は、とても美しい白い肌をしたかわいい女の子だった。
「浦霧 佳穂です、趣味は…特にないです。仲良くできたらなと思います。よろしくお願いします。」
内心、僕はしっかりした子だなと思った。みんなになじめるかしばらくは心配していたのだが、その心配はよそに、どんどんクラスのみんなになじんでいった。
僕のクラスでは、いつの間にか、彼女がいないと暗い雰囲気になるようになった。そして、彼女も度々休むようになってしまった。
クラスのみんなは心配して彼女の家に宿題を届けるついでに、様子を見に行ったりしたが、彼女は出てこなかった。
そんなある日のこと。
スーパーで、おつかい中に、彼女と会った。僕は声をかけたが、気づいてもらえなかった。
悲しいと思いながらもレジに向かおうとした時…女の人の悲鳴が聞こえた。
吃驚して振り向いてみると、彼女が倒れていた。周りの人は慌てふためき、パニック状態だった。
しばらくして救急車が到着し、彼女は搬送されていった。
何があったのかしばらく理解できず、ただ立ち尽くしていた。
後日、彼女は入院したと、担任より告げられた。あまりのショックに、教室は悲しみの感情に溢れていた。
その日の放課後、担任の先生に呼び出しをされた。
「君、浦霧さんのところに、お見舞いに行ってくれないかな?」
そういわれて、「僕なんかでいいんですか?」
と返答したが、即答で「君が行ってくれ。ね?」
と半ば強制的に行くことになった。
別に、行くこと自体には問題はないのだが、実は友達と遊ぶ約束をしていたのだ。
遊びに行けないことを友達に伝えたのち、僕は、地図に書いてある病院を目指した。
そして、到着後、指定された病室に行き、彼女と会った…のだが、こんなバカな僕でも分かった。
これはかなり深刻な事態だと。
なぜなら、彼女は不治の病だったのだ。彼女はかすかに意識を保っていたが、もう先は長くなさそうだった。でもなぜ僕が?ここに呼ばれたのか?ほかの人の方が良かったのではないだろうか?
といった考えが頭を駆け巡る。
その時、彼女がわずかに動く口を使って
「ありがとう、来てくれて。本当は言わないでおこうと思ってたけど、言うね…」
と衝撃の事実を明かした。
その後、彼女は家族に看取られて、息を引き取ったそうだ。
僕は今、医師になった。彼女のユメをかなえるべく、日々、診察を続けている。
彼女は僕の「夢」の中で生きている。彼女に今でも伝えきれなかったことがある。
「君のことが好きです。僕の夢を見つけてくれてありがとう。」
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