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「パスタかぁ、何にしようかなぁ」
黒木はメニュー表に目を落とすと
どれにしようかと迷い出した。
俺はというとメニュー表を見つめながらも
耳は隣のボックス席に全集中させている。
「桜良ちゃん、僕、最近、トカゲ飼った
んだよね。」
男はスマートフォンを
操作して桜良にそのトカゲの写真を見せている。
少し近すぎないか. . .?
俺は耳をダンボにしながら、視界の片隅に入る二人の距離の近さに胸がザワザワとざわつく。
「本当だ。禅ちゃん昔から爬虫類とか生き物すきだったもんね。まだ小さくて可愛いね」
桜良は写真を見ながら嬉しそうに呟いた。
「可愛いでしょ♪
桜良ちゃんならこの可愛さ分かると思ったんだ。」
「女の子だと、苦手な子多いから
禅ちゃんの彼女とか嫌がるんじゃない?」
「彼女はいないよ。今、片思い中だから」
「えっ、あの禅ちゃんがっ!」
「桜良ちゃん、失礼だな。
これでも、やっと自分から好きだと思えた相手なんだ。」
「へえ。じゃあ、禅ちゃんの初恋だね」
そう言って桜良は男に微笑みかける。
俺の心臓はチクチクと針が刺されているように痛みが走る。
本来ならその位置は俺だった. . .
俺の言葉にいつも桜良はうんうんと嬉しそうに耳を傾けてくれたのだ. ..
しかし、今は蚊帳の外のような位置でどんよりとメニュー表に眺めている。
「うん...こんな気持ちは初めてだよ」
そう言って桜良を見つめる禅というやつの
瞳が優しくて、まるで桜良に告白しているかのようだった。
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