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「竜海、決まったか?」
ふいに黒木に問い掛けられて、
俺はピクッと肩を震わせた。
何にするかなんて全く決めていなかった俺は「ああ、決まった」桜良が食べているトマトとサーモンのパスタに目を止めた。
「隣が気になるようだね。」
黒木は頬杖つきながら、ニヤニヤと
からかうように小声で呟いた。
「別に」
取り合わないといったように
素っ気なくこたえた。
黒木の顔には俺をからかって面白いと
書いてあるようかのようだ。
それから、料理が目の前に出されてからも食事しながら隣の話に耳を傾けていた。
「これが、去年インドに行って象に乗ったときの写真。」
スマートフォン片手に説明する男に
桜良は「へぇ。楽しそう」と目を輝かせて聞いている。
桜良のやつ、
そんなに興味津々に聞いていたら男は
簡単に勘違いしてしまうだろ?
桜良の禅に対する態度があまりにも
好意的に見えて竜海は一人苛立ちながら
出された珈琲をすする。
「あっ、そうだ!
今、水族館のイベントで変わった生き物展やってるんだけど、桜良ちゃん一緒行かない?」
男が急に思いついたように桜良に言った。
「はっ?!」
思わず隣で聞いていた俺は叫んでしまい、
その声に二人は一斉にこちらを向いた。
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