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「桜良ちゃん、昔僕が落ち込んでるときに
僕は女タラシじゃなくて人たらしなんだって言ってくれたの覚えてる?
人の心を掴むのが上手くて不思議な雰囲気に皆惹きつけられてしまうんだって..
あれほんとに嬉しかったんだよね。
僕がずっと短所だと思ってたことを、桜良ちゃんだけが褒めてくれたんだ。」
「うん。あのいつも飄々として悩みなんてなさそうな禅ちゃんが初めて落ち込んでたからよく覚えてるよ。」
禅ちゃんは私の言葉に
「悩みなさそうって桜良ちゃん酷いね。」
と言いながら苦々しく笑った。
「でも、ちょっと嬉しかったんだ。
私にとっては無敵だと思ってた禅ちゃんが
初めて私に悩みを打ち明けてくれたから。
だから、私も頑張ろうって思えたの。
悩んでるのは自分だけじゃないって思えたから。禅ちゃんと出会えたことで私はまた前を向くことができたんだよ。
ありがとう。禅ちゃん。私の友達になってくれて」
禅は桜良の友達という言葉に複雑になりながらも、優しい笑みを桜良に向ける。
「うん。僕も. . .ありがとう。
桜良ちゃんに出会えって
初めての感情を知ることができたよ。」
私はその言葉の意味が分からず
“どういうこと?”と首を傾げていると、
ふと誰かの視線を感じて足を止めた。
そして私が後ろを振り返ると
サングラスをかけた男性が
スマートフォンをこちらに向けて
立っていた。
その男はわたしが見ていることに気づくと
踵を返して去っていった。
禅ちゃんが後ろ振り返って立ち止まる私に
「桜良ちゃん、どうかした?」
と一緒に足を止めた。
私は顔を横に振って
「ううん。何でもない。」
と再び歩き出した。
私を撮っていた...?
いや、気にし過ぎだ。
あの人はただ道を間違えただけなのかもしれないし。
しかし最近、ふとした瞬間に視線を感じたり、誰かにつけられているのような感覚に襲われるのだ。
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