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水族館について車を降りると無言で歩いていく竜海さんの後を私も気まずいながらも黙ってついていく。
「あっ、桜良ちゃ〜ん!」
すると出入り口で禅がちゃん嬉しそうにこちらに向かって手を振っているのが見えた。
「禅ちゃん、おはよう」
私は禅ちゃんに向かって微笑んだ。
「ごめん、待たせたかな?」
竜海さんは申し訳なさげに禅ちゃんに問い掛ける。
「いえ、今来たところです。
三人分の入場券を買っておいたんで
早く入りましょう。」
禅ちゃんは竜海さんと私との間に少し距離が
できていることに気がついてないようだ。
「あっ、そうだ!お金っ」
私は財布を取り出そうと
急いで自分のバックを漁る。
すると禅ちゃんは「これくらい大丈夫だよ」
と私の手に自分の手を重ねて止めた。
そして禅ちゃんは
「皆藤さんもここは僕が出しますんで」と
私の手を掴んだまま竜海さんに柔らかな笑顔を向ける。
竜海さんは少しの間、禅ちゃんと私の重なった手を見つめていたが、ハッと我に返ると
「ありがとう。それでは昼食は私がご馳走させてもらうよ」
禅ちゃんに笑顔を返した。
「はい。」と禅ちゃんはその提案を受け入れる。
私はなんだか申し訳なく思いながら
二人に向かって
「ありがとうございます」と
遠慮がちに頭を下げた。
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