第3話

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そして、その後はずっと 禅ちゃんの独壇場と化していた。 「桜良ちゃん、クラゲって脳がないんだよ。その代わり神経が全身に張り巡らされていて、その神経が刺激されることによって反射的に動いてるんだ」 「へぇ。じゃあ、悩むことなんてなくて羨ましいな」 私が呟くと禅ちゃんは「ハハッ。そうだね」嬉しそうに言った。 「あっ、桜良ちゃん! こっちはベニクラゲだよ!」 ベニクラゲの水槽を見つけた禅ちゃんは 再び私の手を取るとお目当て水槽に向かって歩きだす。 相変わらず、禅ちゃんは好きなもののこと となると周りが見えなくなるんだから.. 私は禅ちゃんに手をひかれながら やれやれと息を吐く。 しかし、イキイキとした禅ちゃんとは反対に私はずっと竜海さんのことが気になってしかたなかった。 なんであんな酷い言い方をしてしまったのかとあれからずっと後悔していたのだ。 「ベニクラゲは不老不死なんだ。 命の危険にあうと赤ちゃんに戻ってまた1から大人に成長するんだよ。だから、捕食されない限り、永遠に生きることができるんだ」 「そうなんだ..禅ちゃん詳しいね」 「クラゲ好きなんだよね。 見てると癒やされるから、 たまにきてボーッと眺めてるよ」 「そういえばクラゲって禅ちゃんに似てるかも」 私が微笑むと禅ちゃんは「そうかな?」 と照れくさそうに頭をかいている。 そんな楽しそうな二人とは真逆に 一人竜海はイライラしながら その様子を後ろから眺めていた。
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