5時からヒロイン

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私は、この会社の秘書。ファイブスター製薬の秘書課は別名「玉の輿課」。歴代の社長は全て、秘書を妻にしている。 社長だけではなく、過去の重役、部長職といったエリートは全て秘書だ。エリートのセレブ妻になるために女性社員は、ファイブスター製薬の秘書課に異動の希望を出していると言っても過言ではない。 そして、秘書課の女性たちが目を輝かすのには訳がある。なぜか我がファイブスター製薬の管理職は独身が多い。年功序列制度は早くに廃止されており、実力で昇進している。ありがちな昇進試験はなく、統率力、功績、業績、周りからの評価のみで判断される。 秘書課にはそのエリートたちを狙う女がいつもいる。 この制度は前社長が導入したものであり、自分の子供すなわち、現社長の五代真弥が社長になった時、「仕事も出来ない御曹司」と言われないための処置で、五代社長にとっても重圧がかかることだった。でも社長はそんな重圧もまんまと押しのけ、満場一致で社長に就任した。だからこそ社長になった今も、仕事の手は抜かずに、全て把握することを心に決めて、経営に挑んでいる。 そんな社長の秘書になってしまったお陰で、恋愛もせずに既にこの歳。秘書課の寿退職年齢は平均二十五歳なのに、私はその平均さえも押し上げてしまっている。 「可愛く美しければ、仕事なんて出来なくていいのよ」
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