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……っ、
頭が重い……薄暗い……
喉が乾いてる……水が飲みたい……
床の冷たさと固さに目を覚ました。
わたし、近所のガキんちょたちが作った落とし穴に落ちて……それから?
浅いはずの落とし穴がやけに深くて……
だんだん体が埋まってって、そして……
起き上がると体の節々が痛い。
薄暗さに、今が夜だってことがわかった。
目の焦点が合ってきて周りを見ると、どこかの暗い箱みたいな部屋だった。
ううん、部屋というより、鉄の箱みたいな……。
そして振り返って愕然とした。
わたしの前には、鉄格子の柵が並んでて。
こ、これじゃあ、まるで檻みたい。
檻に入れられてるみたいじゃない!
鉄柵を掴んで揺すってもびくともしない。
出口があるはずと所には大きな錠が掛かってた。
出られない、の?
なんで?
焦りが増してきて大声を出したら、わたしの前にやって来たのは、二本足で立つうさぎだった。
それもただのうさぎじゃない。人間と同じ大きさのうさぎ。おまけにビシッと燕尾服を着ててまるで、不思議の国のアリスの話に出てくるうさぎ。
その手には懐中時計を持っていた。
「○△&§♯♭#△☆▽」
うさぎはわからない言葉を吐いて、わたしの握ってた鉄柵をもう片方に握ってたムチで打った。
きゃっ
アリスのうさぎが狂暴に目が赤くなった。
わたしが体を縮込ませると、今度はうさぎは向かいの鉄柵の中にいる誰かをそのムチで打った。
そして、転がって来たものにわたしは目を剥いた。
それは、わたしと同じ人間の首だった。
痩せ細り、ううん、もう骸骨になった首。
まるで、騒げばこうなるぞって言ってるみたいに思えて、後退り檻の隅に逃げた。
うさぎはわたしがおとなしくなったのを見て、ピョンピョンと跳ねて戻って行った。
夢なら早く覚めて。
怖くて震えが止まらない。
夜が深くなる。空に浮かんだ月はふたつだった。
ここは、どこ?
わたしの知ってる世界じゃないの?
もう、認めるしかなかった。
ここは異世界だと。
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