廃墟の真実

4/5
前へ
/5ページ
次へ
島田康太の場合    あんなことがなければ大野とは今でもつるんでたと思うよ。本当に気が合う友達だったんだ。  俺は大野のおかげで助かったわけだけど、俺も大野も人が死ぬ瞬間を間近で見てしまった。  ショックのあまり大野はその後、記憶障害になり、今でも当時の記憶は曖昧らしい。  俺は持ち前のタフな精神力でそこまではならなかったけど、当時は相当病んでいたと思う。  まあ、そりゃそうだ。だって俺がそもそもの言い出しっぺだからな。  大野が責任を感じておかしくなったのは俺のせいなんだ。いつか大野には言わないといけないなとは思っている。  死んだあいつは本当に運が悪かった。普段俺のすぐ後ろを歩いていたやつが、たまたま先頭を歩くことになっちまったわけだ。  その瞬間まさか天井が落ちてくるとは誰も想像ができない。  俺と大野の数センチ先までコンクリートの破片が広がっていた。生死の境目は本当にあと1,2歩分くらいだったよ。あいつは完全に押しつぶされていたからね。  連鎖して建物が崩壊するかもしれないと思った俺はすぐにここから逃げないといけないと思い、「皆逃げろ」と叫び、呆然としている大野を引っ張り工場を出た。  これがあの日の出来事なんだよね。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加