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 どこからか、濡れた音が聞こえてくる。  それと同時に唇にぬるりとした温かいものが触れ、夢現の中呼吸が乱れた。 「ん、ぅ……っ」  この不快な感覚には嫌ってほど身に覚えがあった。  呼吸が吹きかかり、朧気な頭の中は次第にはっきりと鮮明になっていく。 「……っ!」  そして、俺は飛び起きた。  薄暗い、広くはない車内。上に覆いかぶさってくる人影は、俺が起き上がろうとしたのを見て「ああ」と静かに口にした。 「ぁ、あんた、なに……し、……ッ!」 「……もう起きたのか。もう少し、眠っててもいいんだけど」  そう花戸が動いたとき。自分の下腹部から濡れた音が響き、血の気が引いた。  そのままゆるゆると腰を動かす花戸。その度にぼんやりとしていた頭の中に嫌な感覚が広がる。  自分の下半身を見て確認などしたくなかった。  開いた俺の股の間には花戸のものが深々と挿入され、眠ってる間に何度か出されたのだろうか、やつが動く度に既に熱が回った全身は拒むことすらできなかった。 「ゃ、な……っ、ん、ぅ゛……ッ!」 「ごめんね、本当は……部屋のベッドまで我慢するつもりだったんだよ? 本当に……っ、けど、駄目だった。君の、間人君の寝顔があまりにも可愛かったから……っ、俺……」 「ぅ、ご、……っ、くな……っぁ゛……っ、ひ……ッ!」  ずるりと引き抜かれた陰茎に引っ張られるように内壁ごと持っていかれそうになり、目の前が赤く染まる。  逃げ出したいのに、シートベルトをつけたままの身体は動かすことすらもままならない。  それどころか、意識がない間に受け入れる体勢まで整えられた現状、拒むことも難しかった。 「ぁ、ぐ……っ、ひ……ッ!」 「本当、恐ろしい子だよ、君は。……俺、多分君に搾り取られて死んじゃうんだろうな……っ」 「だ、れか……っ、たすけ……っ!」  そう、声をあげようとしたときだった。  花戸は息を吐き、そのまま思いっきり腰を打ち付けた。  瞬間、奥の襞を強引に押し上げられ、そのまま深いところで腰を小刻みに動かし始める花戸に俺は声をあげることもできなかった。 「助けて、じゃないだろ? ……っ、なんて、言うんだったっけ? 間人君……っ」 「ッ、ふ、ぅ゛……っ」 「ふ、……っ、はは、まだ恥ずかしいのかな。……でも、これから慣れていけばいいよ。もう俺たちは君のお母さん公認の仲なんだから、ねっ!」 「ぅ゛、ひ……ぎ……ッ!!」  隙間ないほど深く腰を押し付けられたまま腕を引っ張られた瞬間、脳の奥まで性器に突き上げられたかのような衝撃に意識が飛びそうになる。 腹の中が苦しい。  熱くて、もうこんなことしたくないのに、昼間の吐き気と嫌悪感も混ざってどうにかなりそうだった。 「は、ぁ……っ、間人君、このまま出すよ、君のために作った精子だ……っ」 「ぐ、ぅ゛……っ! ひ……っ!」  拒む暇すらもなかった。速さを増したピストンにキャパ超えした下半身は痙攣が収まることもなかった。  そのまま花戸に下半身を抱きしめられたまま、深く、腹の奥に注ぎ込まれる熱。精液でたぷたぷになり、膨らんだ内臓に気持ち悪さのあまり嗚咽を漏らす。吐けるようなものはない。  射精が終わるまで花戸はびくりとも動かなかった。  そして最後の一滴を吐き出すなり、まだ芯を持った性器を再び出し入れさせはじめるのだ。  窓の外は暗く、ここがどこなのか確認することもできない。少なくともマンションの駐車場ではないだろう。  車の外に誰かがいたら不審に思われるかもしれない。そんな不安すらもかき消すほど性欲のままに花戸に犯されていたときだった。  どこからともなくバイブが響く。  そして、激しく腰を打ち付けていた花戸の動きがぴたりと止まった。 「……っ、……?」  なんだ、と思ったとき。目の前の花戸が上着から携帯端末を取り出した。  どうやら誰かから電話がかかっていたようだ。  端末の画面を確認した花戸からは先程までの楽しそうな笑みが消えていた。  そして、そのままあろうことか花戸はその電話に出たのだ。 「――どうしたの? 瑤子さん」  そうなんでもないように、人の母親との電話に出る目の前の男に俺はただ耳を疑った。
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