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…………突然だけど、いま俺は役者として、食えてる。
俺の歳では、流石に主役の話は来ないけど、実力派としてメインキャラの一つは、結構な頻度でやらせて貰っている。
それに、ちょっとした端役だったとしても、俺は喜んでやる。
全ては役者としての糧になるからね。
多分、一般的なサラリーマンより年収は少ないと思うけど、それでも全然生活に困ることはない。
まぁ、今は独り身だからな。
うん? あの後、どうなったって?
うん。何とか友人達に頭を下げて、彼女の居場所を探すことが出来たんだよ。
何日もかかったけどさ。
でも見つけたら、もう他の男と同棲してたよ。
まぁそりゃそうだよな。
そうじゃなきゃ、電化製品まで持っていく必要ないもんな。
ああーと、でも、家電はだいたい彼女が揃えたものだから、全然文句はないんだよ。うん。彼女の選択にも全然文句はない。
それは仕方ないし、そんなもんだよな。うん。
だからさ、実はヒーローっていうのは一番キツイ時に、傍にいて支えてくれたものの事をいうんじゃないかって思うのさ。それは人や物に限らずね。
だから俺は思うんだ。
その人の人生を変える程の力がなくても、辛い時にこそ、そういう時にこそ寄り添える、そういう役を演じれる役者になりたいってね。
それとあの風呂敷だけど、もちろん今も捨てられずに持っている。
…………まぁ鍋敷き代わりになってはいるけどね。
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