中年ヒーローごっこ

まぁそんな感じなわけだ。
だから俺はいま、心も体も死にそうになってるのさ。

つーわけで、自分の心を守る為に一人で語っちゃうか。
いや独りか。

俺が上京して来たのは15年前。目的は役者として成功する為だ。
今時、大手の事務所に所属しているわけでもなく、スカウトされたわけでもない奴が何を言ってるんだって？

まぁそういうなよ。あの時は若かったんだよ。
何だって出来る気がしてたんだ。

そんな伝手も実力も無い俺が所属出来たのは、立ち上げたばかりの小さな劇団だ。その劇団を立ち上げたのは、長年大きな劇団に所属してたけど、主要キャラクターの役が貰えず、実力はあるのに花がなくて埋もれていたっていう役者だ。

んで、ホントに小さな劇団だから、当然役者としての給料なんて出ない。
一応割り当てられたチケットを売ることが出来れば、それが自分のお金になるんだけどね。でも、知名度もないから、基本自分の知り合いに声を掛けることになる。で最初の一回、二回はいい。仲の良い友人達は何だかんだで付き合ってくれからね。

だけど、当然みんなにも仕事もあるわけだし、わざわざ休み日の時間を潰して、その上お金まで払って来て貰うっていうのは本当に難しい。そんなわけで基本チケットっていうのはそこまで売れない。

でも、来てもらえないよりはいいから半額にしたり、当日になってまだ売れてなければ配ることになったりする。そんな感じで、バイトで稼いだ金は消えていく。それに、それなりに上手くチケットの数がさばけたとしても、結局は小道具に大道具、ポスターとかの宣伝費やらなんやらで消えていく。

俺は疑問なんだけど、昨今は直ぐ、宣伝はSNSでやれ。その他の細かいことはパソコンで自前でやれば、費用が押さえられて、少なくてすんで、対比用効果がどうチャラって話をする奴がいるけど、
バイトと長時間の練習時間があるのに、何時そういうのに割く時間があんのかね？

俺の感覚からしたら、散々時間を懸けて、出来たのがクソみたいな宣伝やポスターとかだったら、最初からその時間は働いて稼いで、後はプロに依頼して任せた方が良いと思うのは可笑しいのかね？

何よりも、俺達の劇団は脚本家にはしっかりとお金を払って、作って貰っていた。他の事は兎も角、これだけは別種の才能だ。替えがきかない。

と散々語っちまって悪いけど、そういったお金の話や諸事情は別にいいんだ。
そういう脚本やその他のお金の使い方に対する劇団の方針については俺も賛成だったし。
ただ、世の中にはネットやパソコンで上手く出来た奴もいるって話なんだろうさ。

たださ、独立した何かを始めようって時は、兎に角お金がかかるのは事実だろ？　それはどんな業種だって一緒だと思う。会社を興すにしても、新しい事業を始めるにしてもさ。最初は全て立ち上げた人間達で賄うだろうしさ。

で、やっぱりそんなこともどうでもいいんだ。
自分のこれまでを思い起こしたことで俺は少し冷静になれたから。

まぁ、そんな俺の問題は、天使に会えてしまったことだと思う。