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「逢いたい……でもどうなんだろな」
この十年間を想うと、彼女への愛しさが込み上げてくる。
でも、色々と考えてしまうと、それは嘘なのではないかとも思えてくる。
この彼女への気持ちも、ただ彼女がいてくれると、色々な事が助かるからかとか、そういう打算なんじゃないのかと、そんな疑問がばかりが浮かんで来る。
事実、明日から確実に生活は確実に苦しくなる。
折半していたものは、全部自分に被さって来るし。それを考えると単純に金銭的な負担は倍になるのだ。不安ばかりが募る。
「逢いたい……。でも、結局は自分の都合の為に付き合わせてるんだよな。
散々彼女の時間を無駄にしておいて、まだ彼女を縛るのか…………」
この手にあるボロ布もそうだ。
これは小学生の時、ヒーローごっこ遊びをしていた時に使っていたモノで、その当時流行っていた戦隊モノを真似るのに使っていた物なのだ。
その当時の俺は、好きなヒーローに成りきって、決めゼリフも、変身ポーズも完璧に覚えて、友達の尊敬を集めていた。
別に家が貧乏だったわけじゃないけど、玩具を買うのには厳しくて、中々そういう娯楽の為の物は買ってもらえなかった。
そういう環境に育ったこともあって、単純にヒーローに憧れてそれを真似するってことよりも、道具一つで自由にヒーロー成れること、つまりは演じること、自分ではない誰かなることに夢中になったんだと思う。
…………まぁ彼女にとっては俺は、さしずめショッカーだろうけどな。
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