中年ヒーローごっこ

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「…………」 「…………ふぅー」 「…………見事になんもねぇ」 俺は今、六畳部屋の中心に立っている。 この部屋に隣接しているキッチンと呼べるかわからない、小さなスペースには辛うじて炊飯器とレンジはある。 だから、まぁなんとか、生きてけるか。 しかし、この築何十年経っているかわからない、ボロアパートの他の部屋、つまりは俺が今いる部屋には、見渡してもほぼ何もない。 「いや、この部屋には多くの思い出があるな」 …………うん。 言葉にしてみると、尚更に虚しさが強くなるんだな。 一つ勉強になった。 つい先日まで、ここにはもう一人いたんだ。 そして、その頃は電化製品達もしっかりとこの部屋にいた。 テレビは当然の事ながら、ブルーレイが観れるゲーム機も在ったし、夏の頼れる兄貴分、エアコンもあった。しかし、かつて夏を快適に過ごさせてくれたイケてる彼のいた場所には、今はビス穴があるだけだ。 二人でゲーセンに行った時に獲った景品のぬいぐるみや、食事の時に使っていた小さなテーブルに座椅子なんかももうない。 そして、今は、薄汚れている少々汚い布切れが一枚、床に広がって落ちているだけだ。
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