月下のフィナーレ

3/8
前へ
/167ページ
次へ
「ふぇ!?」 俺は涙と鼻水を堪えきれず、ぐしゃぐしゃに崩れた顔で透を見た。 「ぷっ、何て顔してんだよ、ほら立って」 さっきとは違い呆れ笑いをしている透が手を差し伸べてきた。 「許じで、ぐれるのがぁ!?」 「許す許さないは時間がかかるよ、ただ、これからの事を真剣に考えて話し合おう」 フラフラしながら立ち上がれない俺を、透と駆け寄ってきた母ちゃんが両脇から支えてくれた。 それを不満げに見ている陽子に何度も頭を下げたが 陽子は無視して家の中に入って行った。 「俺ぇ、この先ぃ、どうしたらいいのか分からなぁい」 脱力しすぎて力が緩みきってしまい、その場で屁をこいた。 「兄貴、俺たちが応援するよ。言っただろ?バックアップするって」 「シゲ、お母さんも応援するから」 優しい家族からのその言葉はネットでの誹謗中傷とは違い、傷ついた俺の心を温かく包み込んでいくようだった。 「大丈夫かなぁあ?!俺は大丈夫かなぁ!?」 「ははっ、王様なんだろ?さぁ、家に入ろう」 これまでの様々な事を思い出し その場で立ち止まって、産まれたての赤ん坊のように俺は声を上げて泣いた。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加