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久しぶりに弟宅での夕飯。
あれほど嫌だった食事会は、今は楽しみになっている自分がいる。
コンビニでシャンパンを買い、それを手土産に
弟宅に向かった。
家に入ると、食卓に並んでいるのは
しばらく食べていなかった寿司。
鮮度の良いネタの数々は、キラキラと輝いて見えた。
今日は竜之介の6歳になる誕生日パーティーだ。
俺は景気づけにシャンパンを開けた
勢いよく飛んだコルクが陽子の顔面にクリティカルヒットしてしまい、場が静かになってしまった。
俺はノリで戯けたダンスを披露したあと張り切って声を出した。
「竜之介ぇえ!ハッピーバースデーィ!」
そのままボトルごとラッパ飲みした俺の姿を、みんな唖然と見ていた。
「さ、さあ、今日は竜之介の誕生日だ、楽しもう!」
透が食事を勧めて、ようやく固まった空気が和らいだ。
「竜之介ぇ、実はな、プレゼントがあるんだ!前から欲しがっていただろ?」
俺は紙袋から丁寧に畳んだマント代わりの赤い風呂敷を出し、広げて竜之介を包んだ。
背中の方には、カタカナで『シゲル』とサインが入っている。
「どうだぁ!?嬉しいか!?竜之介?これで、お前も王子様だな!はっはっは」
竜之介は、下を向きながら、困った様子で
小さくありがとうと言った。
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