3 逃げた先の、友人

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「俺は拾われたんじゃ」 「父上の嘘だよ。父上はギンの面倒を見ることで、鬼との取引を成立させたんだ」 仙太が笑う。怒ったような楽しそうな、変な顔で。 唐突に、この洞窟の抜け道を知った、あの日の事を思い出した。あの時も、仙太は同じ顔で笑っていた。 俺と洞窟の抜け道を歩く前に、きっと、仙太は真実を知っていた。 なら、仙太は友達だ。 ずっと友達でいてくれた。 そう思った、次の瞬間だった。 「僕はお前が羨ましい。鬼の子のくせに、罪人の子のくせに、父上に愛されて、妬ましい」 「そ……」 「ああ、うん。その顔が見たかった。ずっと、ずうっと、見たかった」 今度こそ言葉を失った。 崖から突き落とされるとはこのことか、という思いが湧く。もう、どう受け止めていいのかわからない。 仙太がお面をくるくる指で回した。実に機嫌が良さそうだ。 話が本当なら、俺は、あの面の持ち主に、取引に使われた。俺を愛してくれたのは、罪悪感からだろうか。 直後、口の中に干芋の味がよみがえった。 罪悪感もあるかもしれない。 村の平和のために、愛さなくてはならなかったのかもしれない。 でも、だけど、仙遊さまから頂いたかけがえのないものが、消えてなくなったわけではない。 俺は顔を上げた。 仙太を睨みつける。
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