8人が本棚に入れています
本棚に追加
「本日が入金処理の締め日です。経理の都合上、未入金と処理する訳にはいきません。待たせて頂いたとしても、十六時半迄にご用意頂けない場合は、致し方ありませんが懲戒処分の後、警察に被害届を提出せざるを得ません……ご理解頂けますよう」
遠回しの脅迫って訳だな? ほんの少し猶予を持たせる辺り、これも何か心理的な意図があるのだろう。
だか、そんな事はどうでも良い。十六時に現場に行って反対に同じ金額を脅し取ってやる。
このペン型の盗聴器で録音すれば証拠にもなる。
「わかりました。必ず伺います」
俺はそう言って電話を切った。
さて、少し早いが現場の下見を兼ねて家を出るとするか。
と……その間に両親が帰って来て、再びかかって来た電話に出てまんまと騙されては困る。
俺は固定電話の電話線をそっと引き抜いた。
真面目な両親がオレオレ詐欺に騙されて、本当に三百万円持って行ったのでは本末転倒だからな。
「これで大丈夫だ」
出掛けようと俺がリビングのドアを開けた瞬間、玄関を開け帰って来た母親と目が合った。
最初のコメントを投稿しよう!