俺を名乗る電話

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 クソっ! 部屋でのんびりしてる所をビックリさせようと思ったのに、こんなシチュエーションでは久しぶりの対面も効果半減じゃないか?  しかし、母親は表情を変える事なく静かに玄関の扉を閉めた。  あまりに突然の事に言葉を失ってしまったのかも知れない。だって十年以上顔を見てないのだから仕方ない……。俺は廊下に立ち尽くしたまま母親が再度玄関を開けるのを待っていた。 「ただいま……いや、この場合お帰り……だろうか?」  何と声を掛けるのが正解なのか、色々と口に出してみたが何故かどれもしっくり来ない。  それから数分して現れたのは母親ではなく、数人の警察官だった。  不思議に思っていると、あれよあれよと言う間に両脇を抱えられ、身動きが取れなくなっていた。  何が何だか分からなくなり、辺りを見渡したが、そこには母親の姿は無かった。 「この家の住人が、知らない男が家に居ると交番に駆け込んできたんだ……誰だ、お前は! あの家で何をしていた?」 「お、俺はこの家の息子だ……久しぶりに実家に帰省しただけだ、離せっ! 俺が何をしたって言うんだ……」
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