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数年振りに帰省した実家は、少し散らかっているように見えた。
俺の綺麗好きは父親譲り。小さい頃は食べ終わった先から、次々と食器を流しに運ばれて行った程だ。
そんな両親共に歳を取り、片付けも億劫になってきたのかも知れない。
乱雑したテーブルから個装されたお菓子を取り封を切ると口に運び、リビングにあるソファに寝そべりテレビのスイッチをつけた。
普段家にいる時はテレビなんて観る事はないのに、静かに流れる田舎独特の時間が自然とそうさせたのだろう。
目まぐるしく変わるチャンネルは、お昼のワイドショーで止まった。コメンテーターがオレオレ詐欺について得意気に話すが、そんな話に興味はなく一向に耳に入っては来なかった。
すると、固定電話から着信を知らせるベルが鳴る。
突然帰ってビックリさせようと思ったのだが、生憎両親は留守だった。
田舎なので玄関の鍵は開いたまま、先に入って帰りを待たせて貰う事にしたのだ。
順番は逆になったが、暫く見ない息子の顔を見てさぞかし驚く事だろう。そんな両親の顔を思い浮かべ、俺は鳴り響く受話器を上げた。
「は、はい……もしもし」
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